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あたたかな光と相思相愛-永遠の旅へいざなう虹粒子の流れ

あたたかな光と相思相愛-永遠の旅へいざなう虹粒子の流れ

建築は歌うことを夢想する



□□□地球は、ただ回っている。僕らも、ただ歩いている□□□2006.12.02



時代を早く歩き過ぎた天才というのが、いつの時代でも存在します。

随分前に建築家の小宮山昭氏と話をさせて頂く機会がありました。単なる一介のファンと著名人の関係性として、です。

小宮山昭氏は例えば安藤忠雄氏のように国際的にも名の知れ渡った建築家ではありません。しかし紛れもなく日本が世界に誇る巨匠の一人。

フランスの建築家ル・コルビュジェの作品について話をお伺いしている途中に、小宮山昭氏は力を込めるように言いました。

「時代がコルビュジェを理解するには、コルビュジェは時代を早く歩き過ぎた」


殆どの建築物というのは物理的にも、デザインが人に与える心象風景においても風化が避けられないものです。

流行の服と同じで、斬新なデザインと完璧とさえ思える理論武装が施されていたはずのものが、数年後には色褪せてしまう・・・残酷なほどに。

しかし、小宮山昭氏が設計した住宅「LPハウス」「LPハウス2」等の作品はまるで風化する気配がない。

それがあたかも 太古からそこにあって、

そして、未来においてもそれは常に新しいものであるとでも無言で主張するかのように、東京の或る高級住宅街の片隅に建ち続けている。

小宮山昭氏自身も、コルビュジェ同様に時代を早く歩き過ぎた天才であると僕は思っています。









□□□建築は歌うことを夢想する□□□2006.12.06


建築家の小宮山昭氏が、かつて言っていたことを思い出す。

「建築には限界がある。それは、建築は動かないということだ。」



普通の人は建築が動いたら大変だろうと考える。

しかし、巨匠は「建築の限界は=動かないこと」と捉える。

10年以上も前のことだが、当時の小宮山氏は建築とダンスというテーマで巨大な可能性を見つめ続けていた。

建築がダンスするわけがない、普通はそう考える。

しかし、巨匠は建築がダンスする日が来ることを夢見る。

建築が動くわけがない、逆に動いたら大変だ、あんな重量のある物体がリズムに乗せて動き回ったのでは誰も収拾のつけようがなくなる。街はパニックだ。

建築の限界は=動かないこと。

動かないからこそ、建築は静かで得体の知れないエネルギーを場に齎すのだ。

小宮山昭氏、あなたは一体、何をか言わんや・・・なんて結論で片付けて良いわけがない。






建築は美しい蝶々のように青空を羽ばたくことだって出来る。

勿論、ビートに乗せて軽快なダンスを踊ることだって出来る。

建築の心臓が青空に向かうように、歌い始めることを願い続ければ、

建築は、本当に歌い始めるのである。

いつしか世界を美しく奏でるリズムを伴ういながら、

青空に戯れながら軽やかに、建築はダンスを踊り続けるのだ。




真の巨匠とは、

そうした妄想を夢想の翼に変えて、美しい空の上を何処までも飛んでゆけることの出来る人に違いない。

そして、いつか、

建築は本当にダンスするのだと思う。

歌うことを知らない人が、

或る日、突然に歌い始める瞬間も、実はこれと似たようなことなのかも知れない。



永遠と共に未来を見つめる石の摂理は、

人の中にも流れている。

一人、暗闇の空間に静かに埋没しながら、誰とも会話などせずとも、未来に無言で多くの歌を青空に、世界に響かせることの出来る存在。

それが本当の建築家だ。

そして僕は、そんな建築家が好きだ。

小宮山昭氏は、真の巨匠だと思う。






下の写真・ポスト・カードはギリシャのアテネで手にしたもの。

青空の向こうに聳えるのがパルテノン神殿。


ギリシャのアテネ


この神殿を設計した人物は正確には建築家ではない。彫刻家である。

彫刻家は永遠を刻むリズムを知っている。

半世紀以上も前の近代建築の巨匠コルビュジェは、それを知っていたからも建築をデザインしながら生涯、同時進行で彫刻と絵画に没頭したはずなのだ。

コルビュジェが追い求めたもの、それは命が刻み織り成す豊かなリズムだったに違いない。

そう、それは

海と太陽と青空が奏でるメロディとリズムでもあったのだ。

間違いないと思う。

何故なら、本当の建築には血が通っているから。

これは、人間だって同じこと。

血が通っているからこそ、建築だって歌うことが出来るはずなのだ。








以上、こんな馬鹿げた話を一体、かつて誰が書いただろう。

いつか、また、小宮山昭氏と再会することが出来たなら、僕はこの日記を手渡したいと思う。

苦笑しながらも、もしかしたら小宮山昭氏は、

ほんの僅かであっても

少しは微笑んでくれるかも知れない。








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